簡易課税制度とは
消費税の納付税額は、通常は次のように計算します。
課税売上高(税抜き)×6.3%-課税仕入高(税込み)×6.3/108
しかし、その課税期間の前々年又は前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出している事業者は、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、課税売上高から仕入控除税額の計算を行うことができる簡易課税制度の適用を受けることができます。
この制度は、仕入控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合とするというものです。この一定割合をみなし仕入率といい、売上げを卸売業、小売業、製造業等、サービス業等及びその他の事業の5つに区分し、それぞれの区分ごとのみなし仕入率を適用します。
みなし仕入率
第一種事業(卸売業) 90%
第二種事業(小売業) 80%
第三種事業(製造業等) 70%
第四種事業(その他の事業) 60%
第五種事業(サービス業等) 50%
みなし仕入率の見直し
簡易課税制度のみなし仕入率について、現行の第四種事業のうち、金融業及び保険業を第五種事業とし、そのみなし仕入率を50%(現行60%)とするとともに、現行の第五種事業のうち、不動産業を第六種事業とし、そのみなし仕入率を40%(現行50%)をすることとされました。
・金融業及び保険業が、第四種事業から第五種事業へ(みなし仕入率60%⇒50%)
・不動産業が、第五種事業から新たに設けられた第六種事業へ(みなし仕入率50%⇒40%)
適用開始時期と経過措置
上記改正は、原則として平成27年4月1日以後に開始する課税期間から適用されます。 ただし、経過措置として、平成26年9月30日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した事業者は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間であってもその届出書に記載した「適用開始課税期間」の初日から2年を経過する日までの間に開始する課税期間については、改正前のみなし仕入率が適用されます。(改正消費税法施行令附則4)
具体例
例えば、不動産業を営む3月31日決算法人で、平成27年4月1日から始まる課税期間(以後「平成27年度」という)から簡易課税制度の選択を考えているとします。 この場合、原則としては、平成27年3月31日までに「簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出をすれば、平成27年度から簡易課税制度の適用を受けることができます。
しかし、ここで重要になってくるのが経過措置です。 みなし仕入率の改正は、原則として平成27年4月1日以後に開始する課税期間から適用されるのですから、平成27年3月31日に届出書を提出すれば簡易課税制度の適用は受けられるものの、みなし仕入率は平成27年度以降40%で計算することになります。 一方、平成26年9月30日までに届出書を提出した場合には、経過措置の適用により、みなし仕入率は平成27年度と平成28年度については50%で計算することができます。
さらに具体的に、年間課税売上高が3,000万円の場合に税額がどのくらい変わるかを見てみましょう。
〈みなし仕入率50%の場合〉
3,000万円×6.3%=189万円
189万円×50%=94万5千円
189万円-94万5千円=94万5千円 ← 国税
94万5千円×17/63=25万5千円 ← 地方消費税
94万5千円+25万5千円=120万円 ← 納付税額
〈みなし仕入率40%の場合〉
3,000万円×6.3%=189万円
189万円×40%=75万6千円
189万円-75万6千円=113万4千円 ← 国税
113万4千円×17/63=30万6千円 ← 地方消費税
113万4千円+30万6千円=144万円 ← 納付税額
上記のように課税売上高が3000万円の場合、みなし仕入率が50%か40%かで年間納付税額が24万円も変わってきます。平成27年度と平成28年度の2期分違えば、合計48万円もの差になります(便宜上、2期とも税率8%としています)。届出書の提出日が違うだけでこの差は大きいですね。
平成26年9月30日までに来期から簡易課税制度を選択することを決めてたのに届出書を提出するのを忘れてた、ということの無いようにしましょう!